兄《にい》さんの三之助《さんのすけ》

 ある日《ひ》、兄《にい》さんの三之助《さんのすけ》が、諭吉《ゆきち》をよんで、いいました。「どうだ、諭吉《ゆきち》。オランダ語《ご》を勉強《べんきょう》して、原書《げんしょ》(外国語《がいこくご》でかかれた本《ほん》)をよんでみる気《き》はないか。」 いきなり、こんなことをいわれたので、諭吉《ゆきち》は、目《め》をまるくしました。それに、原書《げんしょ》ということばははじめてきいたことばなので、「その原書《げんしょ》っていうのは、なんですか。」とききかえしました。「オランダ語《ご》でかいた本《ほん》のことだよ。日本語《にほんご》にも、かなりほんやくされているけれども、だいじなところだけをみじかくかいたり、ときには、まちがってほんやくしたところがあるそうだ。だから、砲術《ほうじゅつ》をほんとうにしるには、自分《じぶん》で、その原書《げんしょ》をよまなければならないんだ。」「ずいぶんむずかしいんでしょうね。」「それは、むずかしいにきまっているさ。けれども、原書《げんしょ》をよむことができれば、ほんとうのことがわかるからおもしろいぞ。どうだ、やってみないか、諭吉《ゆきち》。」「やりましょう。どうせ、人《ひと》のよむものなら、横文字《よこもじ》であろうが、なんであろうが、やれないということはないでしょうから。」 諭吉《ゆきち》の負《ま》けずぎらいな気持《きも》ちが、むくむくと、むねの中《なか》にわきあがって、そういわせました。「そうだとも。おまえなら、その気《き》にさえなれば、きっとやれるとおもうよ。」と、兄《にい》さんは、にっこりわらいました。

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